【スクランブルスクール@夏休み】【お手玉 ジャグラー・コーヘイ】
昨年秋に開催した「スクランブルスクール」の夏休み版で、子供たちの自由研究向けにストリートを体感する「授業」を開催。
お手玉編の講師はジャグラー・コーヘイ。道内で様々な出演歴を持ち、スクランブルガレージ以外にもジャグリングの指導歴を持つパフォーマーである。
ジャグラー・コーヘイは「ジャグリングのイントロダクション」からワークショップをスタートした。
「皆さんはジャグリングと聞いて何を思い浮かべますか?」と参加者に問いかけるコーヘイ。「投げる」「回す」「パフォーマンス」など続々とイメージを表す単語を上げていくのを、コーヘイは紙に書き出していった。
一通り書き終えたところで、コーヘイはジャグラーの性質について解説した。
所説様々あるが、ジャグリングをアートとスポーツの二つの要素に大別した。
どちらかに振り切る人もいるし、二つの要素をバランスよく取り入れる人もいる。
競技スポーツのように、技術力向上のためにひたすら練習をする。コーヘイはまさにこのタイプである。ジャグリングを以てして「アート」を表現する人は、ジャグリングを用いた表現を、人にどう見せたら伝わるかといったジャグリングを探す。
ジャグリングはとにかく練習量がすべてであるが、その練習を、獲得するスキルをどういった方向に持っていきたいかで練習スタイルが変わってくるとコーヘイは補足し、どんなジャグラーになりたいかイメージしてみてくださいと一つ目の座学を締めくくった。
「では基礎練習をしましょう」と実学に移った。
まずはボール一個からスタート。
ボールジャグリングの基本技「カスケード」の投げ方をレクチャー。左右交互にトスし、キャッチする。まずはその感覚に慣れるために一個を右から左へ、左から右へと交互に、正確にトスする練習を始めた。
ポイントは
①放物線を描くように投げる
②手首のスナップではなく肘から先をしっかり下げ、腕を動かして投げる
③キャッチではなく、きちんと「投げる」ことを意識する
と伝えた。 このポイントを意識すると正しいカスケードの軌道で投げやすくなる。
参加者から「ジャグラーは投げる時にいつもどこを見ているんですか?」という質問が上がった。ジャグラーはパフォーマンス中よく上方を見ているが、実際はどこを見ているのか。「放物線の頂点あたりです」とコーヘイは答える。
放物線の頂点を見ればどこに落ちるかわかるから、ボールが落ちてくるところに手を出すだけでいいのだと解説を添えた。
ジャグラー・コーヘイは「ジャグリングは基本的には理論的に構築されているんです」と魅力を語った。
基礎を理解したところで少しステージを上げて、背中や足の下からボールを通す技に挑戦し、二個投げの練習を行った。二個投げは先ほどのポイントに加えて交互にタイミングを合わせて投げるのが重要になる。どちらかが早まるとリズムが崩れてボールを落としてしまうのだ。
これまでの投げ方を基本にし、いよいよ3個を投げ始める。三個目を投げるタイミングをつかむのが最初は難しいところである。二個目を投げた後、三つ目を投げようにもなかなか意図したようには投げられない。この3個目を投げることができれば(もちろんキャッチも成功すれば)3ボールカスケードの完成はぐっと近づく。
3個目を投げてキャッチする。これをクリアすれば地道に一個ずつキャッチする回数を増やしていく練習段階に入る。
練習しながらコーヘイは「今回のWSで技を完璧に習得することはできません。それは当たり前です。今回のWSでは基礎の練習方法を教えています。それを持ち帰ってもらい、各自練習することが上達への道です。」と参加者に今回の意図を伝えた。
参加者が複数個投げるのに苦戦している様子を見て、コーヘイは各参加者の投げられない原因を解説していた。例えば、どちらか一方のボールが高すぎたり低すぎたりする場合、投げ上げる高さを合わせるとうまくいくというアドバイスをした。
さらに練習している間にコーヘイは「上達する練習方法は上手くなった人の経験を聞くのが一番いいです。上手い人がいたら、その人にたくさん聞くのが一番いいです。どういった練習をしたらその技ができるようになったのか、とか。」とコーヘイの持論を展開した。
そしてまた座学に戻り、「サイトスワップ」についての解説を始めた。
サイトスワップ(siteswap)とは、ボールやクラブなどのトスジャグリングにおいて投げ上げる物体の高さを数列で表現したものです。
(日本ジャグリング協会オフィシャルサイトから引用)
サイトスワップの詳細は日本ジャグリング協会オフィシャルサイトの参照。
最後は参加者持参の小道具でジャグリングができるかという挑戦をしたり、参加者が各々練習を重ねた。
まとめ
今回は参加者が全員ジャグリング初心者で、基礎部分を丁寧に解説した。ジャグリングはどうやってボールを次々と投げているのかを一つずつ分かりやすくポイントを伝えることで、参加者が各自で練習するときに困らず意識できるような道筋を提供したワークショップになった。ジャグラー・コーヘイの経験から生まれた練習方法・持論をたっぷりと聞けて参加者にとっては貴重で贅沢な時間であった。
参加者はコーヘイの動作をよく見て、「もう一度ゆっくりお願いします!」と熱意あるリクエストをしていたのが印象的であった。そしてとても楽しそうにボールを投げる難しさと格闘していた。
今回の参加者がジャグリングの今までのイメージと違う新たな魅力を理解し、楽しく感じてもらえたことは間違いない。理論的で組み立てる楽しさが今回説明されたジャグリングの新たな魅力である。私もそこで初めてその一面を知った。
ひたすら練習してスキルを磨くイメージから、技を作る楽しさへとステージが上がれば楽しみ方も変わってくることを伝えた。
参加者が「難しい〜!すごいな〜!!」と何度も話していたことから、パフォーマーが普段顔色一つ変えずやってのける技の難しさを体感できたのではないだろうか。
ジャグリングの楽しさと難しさを体感し、講師の実力を間近に見れる充実したワークショップであった。