時雨のパフォーマンスへの想い──スクランブルガレージ運営メンバーインタビュー企画
スクランブルガレージ運営メンバーの顔が見えるようにということで始まったインタビュー企画。
今回のメンバーはジャグリングパフォーマーの時雨。
2017年が始まってからも商業施設のイベントやテレビ番組に出演するなど、活発に活動している時雨。主にディアボロを得意とする彼の独特なパフォーマンスは、見る人たちを惹きつけて離さない。
今回、その魅力的なパフォーマンスの原点について語ってくれた。
—―では、ジャグリングを始めたきっかけはなんですか?
時雨:ジャグリングはお手玉から始めました。
ジャグリングを始める前の中学1年生から中学2年生にかけてはけん玉が趣味でした。中2の学芸会でジャグリングをみんなですることになったのですが、けん玉は誰もいないからお手玉をしてくれという先生の説得があり、嫌々始めたのがきっかけです。
中3の受験期に熱が冷めて中断もしましたが、高2のときにジャグリングの世界大会の動画を見て、「この人にできるなら俺にもできる」と思って(笑)
それからまともにディアボロを始めましたね。
実はその前にディアボロは買っていたのですが、触った瞬間に「無理だ」と思ってしまい、その後は半年間部屋のオブジェになって…(笑) でも動画を見たとき「気持ちの問題だったな」と思い直しました。
それからはまず学祭で発表することを目標にして、サークル(まめぞう札幌)に顔だしたり、動画を見たりして練習にのめり込んでいきましたね。
——動画を見て真似しながら練習するのは難しくはないのですか?
時雨:とても難しいです(笑)
本当に難しいけれど、スロー再生をして細かい手の角度とかをコピーしたうえで練習していました。
——たくさんの練習を重ねてきたと思いますが、今振り返って一番きつかったなと思う時期ってありますか?
時雨:3年目ですね。三つのディアボロを回すという目標が何度練習しても達成できなくて、行き詰りました。できる人が目の前にいるのになんでできないんだろうって思ったりしました。一回その技を捨てて、他の技に特化したり、違う技の専門になろうとしたりもしましたね。
初級レベルの技は思うように習得できたけれど、上級の未知の世界は難易度が急に上がって。その壁にぶつかったときがイライラしたし、一番きつかったです。
——その技が出来ようになったのはいつごろですか?
時雨:ずっと別の練習をしていて、ふと、できるかなと思って試しにやってみたら「うぉ!回った!」って突然出来るようになって(笑) その感覚が忘れられないですね。できた瞬間は叫びました(笑) そのときはディアボロ歴4年目でした。
——その壁を打破した後はもう壁にぶつかることはなかったのですか?
時雨:打破してからも壁はいっぱいありますよ。上を見たらきりがないですし。
基礎の技が身につけばオリジナルの技を作れるのですが、他の人と違う自分なりのアレンジをしていくということがきつくて難しいですね。楽しいところでもありますが。
——難しい技も諦めずに練習してしまうほどのディアボロの魅力とは何ですか?
時雨:非日常的なものを扱っているというところですかね。非日常的なものを使って魅せることは自分も楽しいですし、観客も楽しんでもらえると思っています。テレビなどで見たことがあっても触ったことはない人が多いし、直接リアルで見ることが出来る機会はなかなかないですから。
そういう方たちが僕のパフォーマンスを見てディアボロを始めましたと言ってくれるの
も嬉しくてやりがいになります。
——そもそも、ディアボロを知らない方にどのようなものか紹介するときはどのようにしていますか?
時雨:パフォーマンスするときは「ディアボロ、中国ゴマとも呼ばれますが、紐でつながれた二本のスティックを使って行うパフォーマンスです」とよく言います。あとはショーを見せたほうが伝わりますね(笑) 手の角度、力の向きや加減で変わる複雑なものなので、百聞は一見に如かずです。
——札幌を中心にパフォーマンスをする時雨さんですが、札幌のストリートならではの魅力はありますか?
時雨:道外でのパフォーマンス経験はあまり多くないですが、札幌は雑なパフォーマンスが出来ないですね。雑というか、少し口調を崩してお客さんを笑いながらいじったりするパフォーマンスが東京や関西ではウケるのに、札幌だと本気だと捉えられてしまうんです。
あと、ショーが始まるという告知のアナウンスだけではお客さんが集まりにくいですね。なのでノートークスタートというのをやっています。技をたくさんするというよりも、自分の雰囲気を動き方や顔つき・目つきで前面に出すという細かいことを毎回のショーで研究しながら空気感を作るようにしています。そのことに気が付いて出来るようになったのは最近ですね。
あと、「チカホ」があるのも札幌の魅力です。パフォーマンスを行うのによく使わせていただきますが、天気に左右されないし、人も通るし。良い所だと思います。
札幌はあまりパフォーマンス文化が浸透していないですが、逆にこれからストリート文化の土台を作ったり伝えたりすることが出来るということも魅力のひとつです。
——多くのパフォーマンスをしている時雨さんですが、パフォーマンスがないときなど普段はなにをしていますか?
時雨:今自分で出しているアパレルのデザインを考えたりします。
あとはもっぱらアニメとゲーム実況を見ていますね!!(笑)
——では、スクランブルガレージへの思いを教えてください。
時雨:もともとは僕と龍さん(スクランブルガレージ代表 龍太郎)で、パフォーマンスができるカフェを作れたらいいねって話だったのですが難しくて、その話をほかの人たちに伝えて仲間が増え、話も膨らみ、今の形になりましたね。
札幌は各ジャンル分け隔てなく関わっているのが特徴的で、だからスクランブルガレージとして、練習場所が欲しいという思いの人たちが集まれたのかなと思います。せっかくこうして各ジャンルの人たちが集まれたから、パフォーマンスしつつ、練習しつつ、これからも関わりを持っていきたいですね。
——最後に今後の目標や夢、理想像を教えてください。
時雨:なんだろうなぁ。(しばらく考え込む)
この先維持していきたいことは、ジャグリングを広めることももちろん、自分のパフォーマンスを見たことがジャグリングを始めるきっかけになれたらいいなと思います。本格的なジャグリングではなく、趣味や特技程度でもいいです。その人たちの目標みたいな存在でありたいです。